むかし、たかきこと申す女御おはしましけり。うせ給て、なゝなぬかのみわざ安祥寺にてしけり。右大将ふぢはらのつねゆきといふ人いまそかりけり。そのみわざにまうで給ひて、かへさに山しなのぜんじのみこおはします、その山しなの宮に、たきおとし、水はしらせなどして、おもしろくつくられたるにまうでたまうて、としごろよそにはつかうまつれど、ちかくはいまだつかうまつらず。こよひはこゝにさぶらはむ、と申したまふ。みこよろこびたまうて、よるのおましのまうけせさせたまふ。さるに、この大将、いでゝたばかりたまふやう、宮づかへのはじめに、たゞなをやはあるべき。三条のおほみゆきせし時、きのくにの千里のはまにありける、いとおもしろきいしたてまつれりき。おほみゆきのゝちたてまつれりしかば、ある人のみざうしのまへのみぞにすへたりしを、しまこのみたまふきみなり。このいしをたてまつらむ、とのたまひて、みずいじん、とねりしてとりにつかはす。いくばくもなくてもてきぬ。このいし、きゝしよりは、見るはまされり。これをたゞにたてまつらばすゞろなるべしとて、人ゞにうたをよませたまふ。みぎのむまのかみなりける人のをなむ、あおきこけをきざみて、まきゑのかたにこのうたをつけてたてまつりける。
あかねどもいはにぞかふるいろ見えぬこゝろを見せむよしのなければ
となむよめりける。
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