むかし、わかきおとこ、けしうはあらぬ女を思ひけり。さかしらするおやありて、おもひもぞつくとて、この女をほかへをひやらむとす。さこそいへ、いまだをいやらず。人のこなれば、まだこゝろいきおひなかりければ、とゞむるいきおひなし。女もいやしければ、すまふちからなし。さるあひだに、おもひはいやまさりにまさる。にはかにおや、この女をゝひうつ。おとこ、ちのなみだをながせども、とゞむるよしなし。ゐていでゝいぬ。おとこ、なくなくよめる。
いでゝいなばたれかわかれのかたからむありしにまさるけふはかなしも
とよみてたえいりにけり。おやあはてにけり。猶思ひてこそいひしか、いとかくしもあらじとおもふに、しんじちにたえいりにければ、まどひて願たてけり。けふのいりあひ許にたえいりて、又の日のいぬの時ばかりになむ、からうじていきいでたりける。むかしのわか人は、さるすける物おもひをなむしける。いまのおきな、まさにしなむや
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